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映画「 ルックバック 」レビュー|藤本タツキの世界観が心に突き刺さる名作

こんにちは!フルタニです。今回は、劇場版アニメ映画「ルックバック」のレビューを書きます。

ルックバック」は藤本タツキさんの反自伝的ニュアンスのコミックを原作とした劇場版アニメーション作品で、「このマンガがすごい」では年間第一位になりました。

単行本の出版してまもなくのタイミングで劇場版が上映されるとの噂。「なにそれ。早っ」と身構えましたが。監督の執念が漏れ聞こえてきて感動。上映初日のピカデリーで鑑賞しました。おおっ!!!

原作の時点で圧倒的な評価を受けたこの作品が、劇場版アニメ作品としてどう描かれているのか。その世界観を、ネタバレを控えつつ語っていきます。

映画「 ルックバック 」レビュー|藤本タツキの世界観が心に突き刺さる名作

ストーリーの概要|静と動の織り成す青春物語

ルックバック」は、小学生の二人の少女、絵が得意な藤野と物静かな京本を中心に描かれた物語です。藤野は学校の新聞にイラストを寄稿する明るい性格。一方、家にこもり絵を描き続ける京本は天才肌で、藤野の絵を遥かに凌駕する才能を持っています。

やがて二人は互いに影響を与え合いながら絵を描く道を共に歩み始めますが、ある出来事をきっかけに物語は大きな転機を迎えます。

「お前!そっちにいくのかよ」という青春ではあるあるの転機ですが、これが「たられば」という重い意味を持ってきます。

「創作とは何か」「人との繋がりとは何か」という深いテーマが静かに胸を打つストーリーです。

映画版の魅力|原作以上に深まる感情表現

原作の漫画はその濃密なストーリーテリングと独特の間の取り方が特徴ですが、映画版ではアニメーションという表現がそれをさらに昇華させています。

1. 動きで描かれる感情の繊細さ

キャラクターの微妙な仕草や表情、背景の空気感までが緻密に描かれていて、登場人物の心情がより深く伝わってきます。特に、藤野が京本の家を訪れるシーンでは、廊下に山積みされた漫画雑誌が印象的に描かれ、扉を境にした二人の間に流れる空気の変化が視覚的に表現されていて印象的でした。

2. 音楽と静寂の使い方

映画の音楽は控えめでありながら、感情を揺さぶる場面では的確に盛り上げてくれます。一方で、静寂がもたらす緊張感も素晴らしく、観客に物語の余韻をじっくり味わわせる演出が光っています。

3. 色彩のドラマチックな使い方

藤本タツキ作品特有の劇的なコントラストが、アニメーションならではの鮮やかな色彩で再現されています。特に、回想シーンや創作の情熱を表す場面では色が感情を増幅させています。

僕は仕事の都合で二年ほど山形県で暮らしたことがあって、本作の舞台となった東北芸工大にも仕事で訪れたことがあります。

市内をなだらかな坂道で見下ろす高台にある清潔感あるキャンパスで。「才能と情熱があればここで学び直したい」と思うほど印象深い学校でした。

感じたテーマ|創作と人生の儚さと力強さ

映画を観終わったあと、心に残るのは「創作」という行為そのものの力強さと、それに伴う孤独や痛みです。特に藤野が、自分の中の劣等感や葛藤と向き合いながら、それでも絵を描き続ける姿は、創作者としてのリアリティに溢れていました。

自分の弱みを過去伏するには描き続けることしかない。というメッセージは、ヨアソビの名曲「群青」を強く想起させられ、僕も、若い頃漠然と抱いていた痛みを思い起こさせられました。

また、京本の存在が象徴する「失われた時間」や「もしも」というテーマも、観る者に深い考察を促します。物語を単なる青春の成功譚に留めないことで、創作にまつわる喜びと苦しみを等しく描いている点に、藤本タツキらしさを感じました。

気になった点|テンポ感の好みが分かれるかも

映画全体のテンポは非常にゆっくりしていて、原作漫画を読んでいると「もっと一気に進んでもいいのでは」と感じる人もいるかもしれません。しかし、この緩やかな進行が、物語に重厚感と余韻を与えているのも確かです。

また、一部のシーンでの暗示的な表現や象徴的なカットが難解に感じる方もいるかもしれません。ですが、それも含めて観る人に解釈を委ねるのがこの作品の良さではないでしょうか。

結論|心に深く響く名作

監督:押山清高, プロデュース:勝股英夫, プロデュース:瓶子吉久, プロデュース:押山清高, Writer:押山清高, 出演:河合優美, 出演:吉田美月喜

映画「ルックバック」は、原作のファンにとっても初見の方にとっても、強い印象を残す作品です。藤本タツキの繊細で力強い物語をアニメーションとして再現し、さらに感情の深みを増したこの映画は、2024年に公開された劇場版アニメの中でも特に観る価値のある一作だと断言できます。

特に50代以上の方には、「創作」や「人生の岐路」に対する考え方が、より心に刺さると感じました。若い頃の自分や、何かを一生懸命にやっていた日々を思い出しながら、ぜひこの作品を味わってみてください。

以上、絶好調でした

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